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プログラミング=考える力が身につく、という誤解
「プログラミングを学ぶと、考える力が身につく」そんな言葉を聞いたことがある方は、多いのではないでしょうか。
最近は、子ども向けのプログラミング教室やロボット教室が増え、「今の時代に必要」「将来役に立つ」という説明を目にする機会も多くなりました。子ども自身が興味を持ち、楽しそうにしている姿を見ると、「きっと良い学びなのだろう」と感じるのも自然なことだと思います。ただ、ここで少しだけ立ち止まって考えてみてほしいのです。
実際に教室で行われているプログラミングは、本当に子どもが“考える”場面になっているでしょうか。
多くの教室では、画面上のブロックを並べたり、決められた手順通りに操作したりしながら、見本通りに動かす学習が中心になっています。完成したときの達成感もあり、周囲からも「すごいね」と褒められます。その様子を見ると、確かに力がついているように感じます。
けれど、その中で子どもがしているのは、「どう考えるか」よりも、「どう動かせば正解になるか」を探すことです。答えはあらかじめ用意されていて、迷っても、間違えても、最終的には正解にたどり着けるようになっています。
本来、考える力とは、答えがはっきりしない中で、どうするかを自分で決めていく力です。何を優先するのか、どこで諦めるのか、うまくいかなかったときにどう立て直すのか。そうした判断の積み重ねが、少しずつ思考の土台をつくっていきます。
しかし、正解が用意された学びの中では、その負荷はとても軽くなります。失敗しても困る人はいませんし、やり直せば元に戻せます。安心できる環境ではありますが、その分、考え続ける必要はあまりありません。
親の立場から見ると、子どもが集中して取り組み、目に見える成果を持ち帰ってくることは、大きな安心につながります。ただ、その安心感が、「考える力が育っている」という思い込みに変わってしまうこともあります。
プログラミング自体が悪いわけではありません。ただ、「プログラミングをしている=考える力が身についている」と、無意識のうちに結びつけてしまうことには注意が必要です。
子どもが今、何を考え、何を考えなくても進めてしまっているのか。そこに目を向けることが、本当に意味のある学びを選ぶ第一歩なのかもしれません。
子どもが「楽しそう」でも、力がついていない理由
子どもが楽しそうにしていると、それだけで少し安心してしまうものです。
嫌がらずに通ってくれる、笑顔で帰ってくる。それは、親としてとても大切なことです。
ただ、ここで一度、ご自身のことを思い出してみてほしいのです。
学生時代の試験勉強や、資格を取るための勉強は楽しかったでしょうか。
「楽しいから頑張れた」というより、「必要だから」「乗り越えなければならなかったから」続けていた、という方のほうが多いのではないでしょうか。
それでも、その経験は確かに今の自分の力になっています。
自転車の練習も、同じです。 最初からうまく乗れた人は、ほとんどいません。
何度も転び、怖い思いをし、悔しくて泣いたことがあるからこそ、バランスの取り方を体で覚えていったはずです。
思い返してみると、何かが身についた経験の多くは、「楽しかったから」ではなく、「うまくいかなかった時間」を通ってきたものではないでしょうか。
学ぶという行為と、楽しそうにしているということは、本来あまり関係がありません。むしろ、考えたり、工夫したり、自分で乗り越えようとするときほど、楽しいとは言いにくい時間になります。
プログラミング教室やロボット教室では、子どもが困りすぎないよう、つまずきすぎないよう、とても丁寧に設計されています。
それは、子どもにとって優しい環境ですし、安心して通わせられる理由にもなります。
ただその一方で、「どうしたらいいかわからない」「思うようにいかない」という時間は、意図的に少なくされています。だから、子どもは楽しそうに取り組めますが、悔しさや葛藤と向き合う場面は、あまり生まれません。
もちろん、楽しい学びが悪いわけではありません。でも、「楽しそうにしているから、きっと力がついている」と考えてしまうと、子どもが本来経験すべき大切な時間を、知らないうちに避けてしまうこともあります。
学びの中に、少しだけうまくいかない瞬間があるか。そこで子どもが、投げ出さずに考えているか。誰かに答えをもらう前に、自分で立ち止まっているか。そうした時間こそが、後になって振り返ったときに、「あれが力になっていた」と感じる経験になるのかもしれません。

社会で本当に必要なのは、正解を出す力ではない
プログラミング教室で行われている学びの多くは、決まった動きを再現し、決まった答えにたどり着くことが目的になっています。なぜなら、それがプログラムというモノだからです。
その考え方自体は、パソコンを相手にするのであれば、とても理にかなっています。機械は、指示された通りに動き、決められた条件の中で正確に答えを返してくれるからです。
ただ、社会に出て子どもたちが向き合う相手は、パソコンではありません。そこにいるのは、生身の人間です。
人は、感情で動きます。同じ状況でも、気分や立場によって判断は変わります。昨日うまくいった方法が、今日は通用しないこともあります。
人が集まってつくられている社会では、方程式のように必ず当てはまる法則は、ほとんど存在しません。知識通りにやったのに、うまくいかない。正しいはずの選択が、思わぬ結果を招く。そんなことが、日常的に起こります。
これからのAI時代。答えは調べれば凡その答えは直ぐに出てきます。 だからこそ、社会で本当に求められるのは、「知識を持っていること」そのものではありません。その知識を、目の前の状況に合わせて使い直せるかどうか。
相手の反応を見て、考えを修正できるかどうか。そして、うまくいかなかったときに、もう一度考え直せるかどうか。それは、答えを一度出して終わる力ではなく、学び続けながら考える力です。
決まった動き、決まった答えを覚える学びは、安心感があります。でもそれだけでは、「想定外」が起きたときに、立ち止まってしまいます。社会で必要なのは、完璧な答えを出せることではありません。状況が変わっても、自分で考え続けられること。相手が人間であることを前提に、柔らかく思考を動かせること。
その力があるかどうかで、社会の中での生きやすさは、大きく変わってきます。
子どもが今、どんな相手と向き合い、どんな判断を求められているのか。そこに目を向けることで、学びの本当の価値が見えてくるのだと思います。
なぜHEARTSはロボットやプログラミングを選ばないのか
ここまで読んでいただいた方の中には、「では、どんな学びが大切なのか」そう感じている方もいらっしゃるかもしれません。
HEARTSでは、あえてロボットや子ども向けのプログラミング教材を中心にはしていません。それは、流行を知らないからでも、ITを否定しているからでもありません。むしろ逆で、ITやデジタルの世界がこれからも重要であり続けることは、十分に理解しています。
だからこそ、その前に育てておくべき力があると考えています。
社会で生きていく中で、子どもたちは必ず、人と関わり、判断を求められます。正解のない問いに向き合い、自分で決め、その結果を受け止める。その繰り返しの中で、人は少しずつ成長していきます。
HEARTSが大切にしているのは、知識を覚えることよりも、考え方の土台をつくることです。答えを早く出すことではなく、なぜそう考えたのかを言葉にできること。うまくいかなかったときに、誰かのせいにせず、もう一度考え直せること。
そのための題材として、HEARTSではチェスを取り入れています。
チェスには、正解が一つに決まる場面はほとんどありません。相手の考えを読み、自分の弱さと向き合い、限られた情報の中で判断を重ねていきます。一手一手に理由があり、その結果はすべて自分に返ってきます。そこには、ロボットを動かす楽しさや、プログラムがうまく動いた達成感とは違う、少し緊張感のある時間があります。
でも、その緊張感こそが、「考える」という行為を本物にしてくれます。
HEARTSが目指しているのは、将来、環境が変わっても、人が相手でも、自分で考え続けられる力です。だからこそ「流行っている」だけの理由ではやりません。必要だと思う順番を、大切にしているだけなのです。
教室選びで、一度立ち止まってほしいこと
子どもの習い事を選ぶとき、「将来に役立ちそうか」「今の時代に合っていそうか」そんな視点で考えるのは、とても自然なことです。
プログラミングやロボット教室が人気なのも、決して不思議ではありません。わかりやすく、楽しそうで、安心できる。親としては、そうした選択をしたくなる気持ちがあって当然だと思います。ただ、もし少しだけ余裕があるなら、こんな問いを持ってみてほしいのです。
この学びは、
子どもが「正解のある世界」に慣れるためのものか、
それとも「正解のない世界」で考えるためのものか。
社会に出てから子どもたちが向き合うのは、決まった答えが用意された問題ではありません。感情を持つ人と関わり、状況が変わり続ける中で、自分で考え、選び、また学び直すことの連続です。
そのときに支えになるのは、どんな技術を知っているかよりも、うまくいかないときに、もう一度考えようとする姿勢です。
子どもが楽しそうにしているかどうか。流行っているから選ぶ。みんながやっているから選ぶ。それも一つの判断です。
それも大切です。
でも同時に、「この学びは、どんな力を育てているのだろう」そう考えることができた時、習い事の選び方は、きっと変わってきます。
HEARTSは、答えを与える教室ではありません。
考える時間を大切にする場所です。
その考え方が、どこか心に引っかかったなら、それだけで、今日この記事を読んだ意味はあったのかもしれません。
そして、教育の意味を分かって頂いているご家庭にだけに贈る授業がHEARTS × Bittechの授業となります。
